インターネットの発達によって、ビジネス社会が急速に変化してきています。

たとえば、銀行の窓口、ATMを使用しなくても、インターネットバンキングで取引ができたり、商品購入、契約書のやりとりをインターネットでしたり、店舗を設けずにWebサイト内でショップを開設したり、情報管理も紙媒体からデータですることになり、各役所へのオンライン申請ですることもできます。

また、ガラケーといわれる携帯電話が数年後に販売中止になるとのニュースもあり、さらにスマートフォンを使用したキャッシュレス化なども進むことになります。

 

【新民法の到達主義採用】

2020年改正前の民法では、隔地者間の契約は、承諾の通知を発信した時点で成立するという「発信主義」を採用していました。

一方、電子契約法では、インターネット上の取引に関する契約成立時期は、意思表示が到達したとき(到達主義)となっています。これは、インターネット上では、一瞬にして意思表示が相手に伝わることから、到達主義を採用しました。このような時代的変化を背景に、改正民法においても契約成立時期が到達主義に改められました。

IT化が進むと、これ以外の法改正が追いつかない部分で発生する法的なトラブルに、法律事務所としても、対処していかなければなりません。

 

【契約書の重要性】

法律で契約書の作成が義務付けられている一部の場合を除いて、多くの場合、口頭でも契約は有効に成立します。それでも、あえて契約書を作成するのは以下の理由によるからです。

 
  • ①契約内容を明確にすることで、トラブルを防止し、さらには、裁判での有力な証拠となる
  • ②契約書に記載されることにより、口約束のような曖昧さが排除され、契約を遵守する意識が高まる
  • ③契約書を作成することにより、契約に沿った事業運営をすることが要求され、結果、業務の効率化につながる
 

とくに、ITビジネスでは契約の成果が物理的に手に取れるようなものでなく、契約当事者相互においても、イメージしにくいものです。それだけに、契約書の存在、及びその内容が極めて重要となります。契約の各段階に応じた適切な内容の契約書の準備が、ビジネスの成功に不可欠です。

 

【ITビジネス上の契約】

ITビジネスを進めていく上で、以下に挙げるような、従来にはなかった契約が出てきました。各契約書を作成する上で、とくに重要な項目を指摘します。

 
①ソフトウェア使用許諾契約
これは、筆まめ、乗換案内、一太郎などのソフトを購入したときに必ず締結させられるもので、ソフトウェアを他人に使用させ、その対価(ライセンス料)を得るための契約です。 この契約において、特に重要なのは、ソフトウェアの使用についての規定です。複製、公衆送信を認めず、「使用」のみを認めるもので、具体的には、原則として、日本国内で設置された1台のコンピュータにインストールするものとし、本ソフトを同時に使用しない場合に他の複数台のコンピュータにおいてもインストールできるなどというものです。
 
②APSサービス使用許諾契約
これは、インターネットバンキングなど、近年急速に普及しているインターネットを利用したアプリケーションの提供を行なうサービスです。Webブラウザから提供元のサーバへアクセスすることでサービスを使用できます。 この契約において、特に重要なのは、本サービスの提供内容とともにサービス提供に支障が生じたときの運営会社の免責についての承諾、ライセンス登録の方法、ID・パスワードの管理、秘密保持、個人情報の利用及び管理などの規定です。これは、ソフトウェアと異なり、インターネットを通じてのサービス提供をうけるため、情報漏えいを防止するためにセキュリティをしっかり図ることが重要となってくることから、このようなソフトウェアにはない数々の規定があります。
 
③インターネット広告代理店契約
これは、楽天、Amazonなどのネット通販ショップがインターネット上で広告宣伝を行うときに広告会社を代理店として、締結する契約です。 この契約において、特に重要なのは、広告主が広告会社に提供する業務内容、たとえば、宣伝広告方法の企画立案、広告の企画・制作、広告出稿の管理、広告効果の測定、データ収集・分析、コンサルティング等のマーケティング業務などです。 また、宣伝広告方法として、バナー広告、リスティング広告(検索連動型広告)、アフィリエイト広告(成果報酬型広告)、SEO(検索エンジン最適化)、LPO(ランディングページ最適化)などの規定も重要です。 さらに、広告であるため、文章、写真、データ、イラストレーションなどの様々のコンテンツを利用することから、これらの著作権をどう取り扱うかについての規定も重要です。
 
④ネットショップ利用契約
これは、楽天、Amazonなどが運営するショッピングサイトを利用して、商品を購入する者がこれらの運営会社との間で締結する契約です。 この契約において、契約締結の方式については、ウェブサイト上に定める方式にしたがって入力していくので、特に重要なのは、商品の決済方法、掲示板の利用規制についての規定があるところです。
 
⑤SNS利用規約
これは、コミュニティ型のWebサイトであるソーシャル・ネットワーキング・サービスを利用するときに締結する契約です。 この契約において、重要なのは、プロフィールの登録・更新機能、テキスト・写真及び動画などの投稿・閲覧機能などのサービスの詳細、会員登録に関する規定、契約違反があった場合の無催告の登録抹消、名誉・信用毀損行為などの禁止行為規定、運営会社の免責規定があるところです。 このSNS利用については、会員の発言によるトラブルが非常に多く、最近、法律事務所においても年々相談案件が増えています。
 

以上の他に以下のようにIT法務特有の様々な契約があります。

 
  • マッチングサイト利用契約
  • Webサイト制作・保守業務委託契約
  • Webサイト譲渡契約
  • SEO委託契約
  • コンテンツ提供に関する契約
  • ドメイン新規取得・契約代行契約
 

以上のように従来には、考えられなかった様々の契約がありますが、今後もインターネットを利用した様々な取引のための契約がインターネットの技術向上とともに必要となってきます。

そして、IT法務については、知的財産権を専門とする弁護士だけでなく、IT法務を専門とする弁護士も必要となってくるでしょう。

 

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