【概説】

国際法務とは、日本企業の海外進出に関する法務(アウトバウンド法務)及び海外企業の日本への進出に関する法務(インバウンド法務)、及び外国人個人の日本における様々な行政手続、裁判手続に関する法務をいいます。

グローバル化が進む中、日本企業は、中国から東南アジアのベトナム、カンボジア、インドネシアへと多く進出しています。

また、政府は、日本における高齢化、少子化に伴う人材不足のため、在留資格のカテゴリー(例えば、介護、特定技能)を増やして、外国労働力を取り入れようとしています。

そこで、今後も国際法務の重要性は増してくると思われますが、法律事務所としては、どのようにして、国際法務に携わっていくべきであるのかについて、以下述べます。

 

アウトバウンド法務

日本企業が海外進出するにあたり、日本企業としては、まず、進出国の法令、慣習、インフラ設備を調査する必要があります。この調査は、日本からの調査員を送り出すだけではなく、やはり、現地でガイド、通訳者を雇う必要があります。

調査をする際には、現地の弁護士、会計士などの専門家の協力を得て、弁護士としては、法務、税務、財務の観点から、現地の法令、慣習を調査していく必要があります。

 

次に現地での事務所の設置については、駐在員を在中させるだけにとどまるのか、支店を設置するのか、海外の内国法人を設立するかの検討も必要です。

現地で事務所を設置するとなった場合、税制度、社会保険制度などを事前に確認して、現地の役所への各種届を提出する必要があり、日本と同じように登記制度のある国では、さらに会社の登記をする必要があります。

事務所が決まりましたら、今度は、社員の募集です。現地で社員を募集すると同時に、日本からは、社員を送り出すことになります。日本から社員を送り出す場合は、ビザの取得をしなければなりません。

 

また、現地での銀行口座を開設する必要がありますが、開設するにあたっては、開設するまでの日数をあらかじめ確認しておく必要があります。

会社を設立するにしても、まずは、現地の法人と提携したり、共同出資して合弁会社として、スタートし、数年経過してから、合弁会社から株式会社へ組織変更して行く方法が賢明かと考えます。

 

また、海外で現地人と雇用契約したり、現地の企業と取引をしていくにあたっては、外国の法令の影響を受ける可能性があるので、どこの国の法令を適用するのか、準拠法を判断決定する必要があります。

法令の適用については、通則法に従い、通常は、法令の契約等の法律行為については、当事者が選択した国や地域の法令によることを原則とし、手続については、当該手続を行う地の法令によるとされています。

 

また、契約書を作成する際にも、法令の適用を確認する必要があり、さらに紛争になった際の管轄裁判所に関する条項も必ず取り入れることが必要となってきます。

 

インバウンド法務

まず、海外の企業が日本へ進出するにあたっては、その企業の母国の法令と日本の法令との適用関係を確認する必要があります。

次に、外国人を日本の企業が雇う場合、外国人が日本で会社を設立して代表者となる場合、以下の点について、注意が必要です。

 
①日本の企業が外国人を雇う場合、以下の就労可能な在留資格を取得しておく必要があります。
  • ・就労ビザと呼ばれる「技術・人文知識・国際業務」「技能」
  • ・人事異動により外国の事務所から日本の事務所に転勤する外国人を受け入れるための「企業内転勤」
  • ・高度の専門的な能力を有する人材として認められた「高度専門職」
  • ・「日本人の配偶者等」
  • ・「定住者」
  • ・「永住」
  • ・「留学生」「家族滞在」の場合は、資格外活動の許可を得ており、制限時間(週28時間)内での就労であること
 
②外国人が日本において起業する場合、「経営・管理」

また、外国人を雇用した際も労働保険(労働者災害補償保険、雇用保険)、社会保険、(健康保険、厚生年金保険)、税金関係(所得税、住民税)も日本人の場合と同様です。

 

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