M&Aとは、直訳すると「合併と買収」ということです。

これは、複数の会社同士を統合したり、会社内にある事業を分離させたり、株式を変動させて経営状態を変えたりして、株式の移動によって会社組織を組み替えていく組織再編を含むものです。

ここで組織再編とは、具体的には、統合方法としての合併、事業の分離方法としての会社分割、株式の変動による親子関係、ひとつのグループ構築方法として株式移転、株式交換があります。

これらは、すべて会社間、または株主間の契約によって手続が進んでいくことになります。

 

【手順】

これらの契約をしていくにあたっては、以下の手順を踏んでいきます。

 
  • ①売主、買主間の秘密保持契約の締結
  • ②基本条件の交渉
  • ③売主、買主間の基本合意書の締結
  • ④買主が対象会社の調査(デューデリジェンス)を行う
  • ⑤売主、買主間の最終契約の交渉
  • ⑥最終契約の締結
 

M&Aは、株主、対象会社の事業、資産等に重大な影響を与えるものであり、財務、税務、法務等の各方面からの検討が必要です。最終的な契約締結にいたるまで、契約の対象が組織であるため時間のかかるものです。概ね半年から1年かかるとみておくといいでしょう。

 

【資金調達】

組織再編においては、買収のため譲受対価だけではなく、デューデリジェンス等の様々な費用が必要となります。そこで、資金調達方法としては、融資による場合と増資による場合、そして、それ以外の方法があります。

[融資]
通常は、銀行等の金融機関から融資を受けます。最も、手っ取り早い方法です。 しかし、この方法は、担保となる資産が必要であること、返済義務がある以上、金利や返済期間について注意が必要です。 なお、日本政策金融公庫では、中小企業におけるM&Aを目的とした融資制度が設けられています。
[増資]

増資には①株主割当増資、②第三者割当増資、③公募増資があります。

 
①株主割当増資
既存の株主に対して、保有している株式数に応じて、発行する新株を引き受ける権利を与える方法です。
 
②第三者割当増資
既存の株主も含めて特定の第三者を指定し、発行する新株を引き受けてもらう方法です。
 
③公募増資
新株を発行して、株式市場からひろく出資を募る方法です。 これらの増資による方法は、株式を対価とするため、資金調達後に返済の必要がないという点でメリットがあります。 他方、第三者割当増資と公募増資では、既存株主は、その持ち株比率に変更が生じ、従来通りの会社支配ができなくなります。そのため、新株発行差し止め請求がなされるおそれがあり、その対応に手間と時間が必要になるというデメリットがあります。
 

[融資・増資以外の方法]

融資・増資以外の方法として、①LBO、②MBOがあります。

 
①LBO(LeveragedBuyout)
買収先の資産及びキャッシュフローを担保にして資金を調達する、M&A固有の方法です。 買収先の資産や将来的な利益が担保の対象となるため、譲受会社の資金力が小さい場合でも利用できるというメリットがあります。 逆に、買収企業に将来的な利益の見込みがあり、継続的な安定した経営が期待できることが前提となり、このような買収先探しが課題です。
 
②MBO(ManagementBuyout)
MBOは、現経営陣が自社株式を他の株主から買取り、オーナーとなる事業承継において、よく用いられます。現経営陣の資金力が低い場合に、事業内容に賛同する金融機関や投資ファンドからサポートを得て資金を調達する方法です。 少ない自己資金力でも利用できるというメリットがある一方で、融資先も強い影響力を持つことになり、経営陣との関係性が重要になります。
 

【組織再編の類型】

組織再編には、前述のように合併、会社分割、株式移転、株式交換がありますが、以下、その具体的な内容とメリットを説明していきます。

 

[合併]

合併とは、2個以上の会社の間の契約により、その一部の会社または全部の会社が解散・消滅して、その財産が存続会社、または、新設会社に包括的に承継されるものです。

合併には、消滅会社が、他方の存続会社に吸収される形で行なわれる吸収合併と、消滅会社が新たに設立される会社に承継される新設会社があります。

合併によるメリットとしては、存続会社にとっては、消滅会社の技術、事業全部を取得することができ、反面、消滅会社にとっては、清算手続を得ることなく解散消滅することができます。さらに、2以上の会社を統合することで、管理コストを削減することもできます。

新たに事業を一から立ち上げる時間を省略でき、会社の規模を拡大し、競争力強化、競争回避を図ることができます。

実務においては、手続の簡便さ、会社設立費用の節減から吸収合併の場合が多くみられます。

 

[会社分割]

会社分割には、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割後の他の会社に承継させる吸収分割と、分割により設立する会社に承継させる新設分割があります。

会社分割のメリットとしては、会社の一部の負債を抱えた不採算部門、または、急成長している採算部門を切り離すことができます。

 

[株式移転と株式交換]

株式移転とは、株式会社が、その発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます。

株式交換とは、株式会社がその発行株式の全部を他の株式会社または合同会社に承継させることをいいます。

つまり、親会社が新しい株式を発行し、それと子会社の株主の株式を交換することによって、親会社が、子会社の100%と株主となることです。

株式移転と株式交換のメリットは、複数の子会社の労働関係、運営状態を維持したまま、親会社が子会社の経営を統合してコントロールしやすくなることです。また、資金の最適投資が実践でき、重複する事業の整理・統合、管理部門の統合等によりコスト削減して、経営の効率化を図っていくことができます。

 

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